「今日は、星がきれいに見えるな。」
「あぁ、オリオンがくっきり見えるな。」
「お前は、昔シリウスが好きだって言ってたよな。天球上で1番明るい星やってな。」
「あぁ、そんなこと言ってたな。」
「今のお前も輝いてるな。」
「輝いてる?・・・危ない輝きだけどな。」
「お前の守ろうとしているのは、俺もわかるけど・・・そんなに一生懸命にならなあかんもんなんか。」
「あぁ、命がけでもな。」
「命がけって・・・なんでそこまでセナあかんのや。お前の守ろうとしてる宝物って、そうまでセナあかんのか。」
「彼らは、宝物の本当の力を知らない。知らないから、力づくでもつぶそうとするのさ。彼らには、不要なものだからな。・・・お前は、それを知ってる。知りすぎているから、その大事さを忘れてしまってるのさ。」
「でも、お前がしなくても誰かがするやろ。宝物を守る前にお前自身を守るべきやろ、違うか? お前自身があってこそ、お前の思いが大切になるんちゃうか。」
「その誰かが、俺やってことさ。」
「正直な話、お前のことが心配やねん。危ない目にあってんのやろ。」
「確かにな。でも、彼らが俺の生き死にを握ってるんじゃない、俺を生かすも殺すもできるのは・・・・友だよ。」
「・・・」
「別に、お前を責めてるんじゃない。けど、それが真実なんだよ。」
「・・・そうだな・・・俺に、何ができるんやろ。」
「それにしても、オリオンが大きいな。昔はもっと小さかったような気がしたけどな。」
「そうやな・・・北極星はどれやったっけ。」
「忘れたな。」
「俺も北極星みたいに不動になりたいよな。」
「・・そうか。でも、不動じゃないだろ。宇宙は膨張してるんだろ、もしかしたら反対方向へ動いてるかもしれないじゃないか。・・・みんな、見ようとしないから、見えないんだよ。」
「・・・」
「そろそろ時間だ、もう行くよ。」
「そうか、気を付けてな。」
「それじゃあ。」
その声が、遠くスマホの中に消えていった。
あいつは、戦いの中へと向かって行った。
俺は、ベランダでビール片手に星を眺め続けた。
俺は、何ができるというんだよ。
遠く離れたあいつに。
何もできない、なにも。
どうすることもできないんだよ。
眺めていることしか出来ないんだよ。
・・・仕方ないんだよ。
でも、
嫌だ。
出来る。
出来る。
出来る。
出来るんや。
そう、
出来るんや。
まずは、俺を克服してやる。
俺は、おおいぬ座になりたい。
シリウスを内包する・・・
コメント